Machinarium:その系譜と、子孫と、日本での評価
01この原点とは
Machinariumは、Amanita Designが開発・発売し2009年にリリースされた作品で、ポイント&クリックアドベンチャーが書かれた言葉を一語も使わずに物語を語り切れることを証明した。小さなロボットは一言も喋らず、錆びついた街の誰も喋らない。プレイヤーが必要とするもの——動機も記憶も冗談も、そして操作の指示さえも——すべてが吹き出しの中の絵として届く。達成されたのは我慢ではなく置換のほうだ。会話が普段運んでいる情報の荷を絵が運べること、しかもそうすると結果は読みにくくなるどころか読みやすくなること、をこの作品は実証した。言葉を使わないアドベンチャーゲームの系譜の原点であり、言語を取り除いても意味は消えず、動きと構図と絵の中へ移動するだけである——そしてプレイヤーはそれを読むことが十分にできる、というデザイン上の洞察の原点でもある。
02出典
03この原点を継ぐ発掘
Dear Flower 埋もれた名作
手描き・モノクロのパズルアドベンチャーで、主人公を操作しながら目の前のものを解いていく。そして他の全てを決めている判断を、ストアページは一行で書いている——Dear Flowerではテキストや会話がありません。一切ない。開発者はその理由を続けて説明していて、それが手抜きではなく設計者の理屈になっている。言葉が無いぶんプレイヤーはより想像しやすく、そこから生まれるのはゲームならではの感情である、と。すべてが手描きだ。キャラクターも背景もカットシーンも同じで、ストアはカットシーンについて「1フレームごとに想いを込めて制作しています」と書いている。操作するのは3人のキャラクターで、その狙いは多様性ではなく視点にある——同じ出来事を3つの位置から見て、それぞれが見る景色がどのようになっていくかを体験する。会話が普段担っている仕事は、作品にマッチした独特のサウンドが引き受けている。制作は Popiicorn Game。Steam上の存在は本作と体験版だけで、連絡先は個人のGmailである。価格は¥1,200。18件のレビュー(好評17件・不評1件、Steam自身のレビューAPI実測)で好評率94%。無料ではない有料タイトルで、アーリーアクセスではなく正式リリース済み、AI生成コンテンツの開示欄は無く、Steamのコンテンツディスクリプタは完全に空である。そして、この作品を書き上げる価値を決めた数字がある。Steamはこのゲームの対応言語を100以上として並べている。日本語や英語から始まって、チェロキー語、ケチュア語、ウォロフ語、ルクセンブルク語まで。馬鹿げて見えるが、訳すべきものが中に何も無いことを思い出せば筋が通る。言葉の無いゲームは、技術的には、既にあらゆる言語で提供されている。そして18件のレビューの内訳は、日本語13件・英語4件だ。