原石
系譜目利き

この荒廃した王国では、全てを教えてくれる者はいない。地形の違和感と死者の記憶を頼りに「発見」すること自体が遊びの本体。

Steam自身の表記によれば、本作は「発見」を楽しむ、マップ探索メインの長編RPGだ。荒廃した王国には無数の隠し通路・隠し扉があり、手掛かりは必ず存在する——それは地形の見た目の違和感か、あるいは各地に漂う死者の「残留思念」かもしれない。ボス以外の戦闘はすべて任意で、物語の目的である4つの「記憶のオーブ」はどの順番で集めてもよく、拠点へ一瞬で帰る方法は「死」だけだ。制作ツールはRPGツクールVX Ace。開発者「もさもさ」は、2021年に無料版のVer1.00公開を伝えた日本語ブログの記事で、その版を2人で制作したと書いている。本作は、日本のフリーゲーム配信サイト「ふりーむ」で今も配布されている無料の通常版『Fanastasis』を拡張した有償版で、メインストーリーとエンディングは元の版と同じだ。184件のレビューで好評率97%の「非常に好評」、¥2,180の有料タイトルで、アーリーアクセスではない。ただし正直に一点開示する——高評価を支えているのは主に簡体字中国語のレビュー(184件中145件、うち好評144件)で、日本語のレビュー30件に限れば好評率83%(好評25件)になる。簡体字のレビュー145件のうち約20件は、有志の中国語化パッチに触れている。開発者は2026年5月、条件付きで非公式の有志翻訳と配布を認めた。英語の翻訳は見つからなかった。対応言語は日本語のみで、英語のレビューは5件。Steamの成人向けコンテンツの説明が挙げるのは、シナリオ内の暴力・流血表現と、薬物やアルコールの乱用・犯罪行為の描写(推奨する意図は無いと明記)で、性的な要素への言及は無い。素材のほぼすべてが既存のものであること、操作はキーボードを想定しマウスには非対応であることも、開発者自身が明記している。媒体では、Game*SparkがSteam版を週間の発売リストに作品名1行で載せた程度で紹介記事は無く、ファミ通・電ファミニコゲーマー・AUTOMATON・IGNにもSteam版を扱った記事は見つからなかった。無料版はもぐらゲームスが2回取り上げている(2020年12月の単独特集と、2021年1月の『2020年おすすめフリゲ・インディゲーム15選』の1本)。

公開 2026-08-20

01まず、その一点の感覚

02こういう人に刺さる

刺さる

  • NepheshelとイストワールというフリーRPG 2作の名を取った「ネフェイスト系」の探索RPGが好きで、道を指し示してくれない王国を、地形の違和感を手掛かりに隠し通路や宝箱を探し当てながら進みたい人
  • 4つの「記憶のオーブ」をどの順番で集めてもよく、進行で取り逃すものも無い(クリア後に全て回収できる)、35〜85時間の長い探索が欲しい人
  • 英語に対応しておらず西側にはほとんど届いていない(英語のレビューは5件)一方で、184件で好評率97%という評価の大半を簡体字中国語のレビュー(145件)が占める——そんな英語の壁の内側にある原石を掘り当てたい人

合わない

  • 日本語が読めない人——本作は英語に一切対応しておらず、情報のつながりや残留思念の読み取りが探索の根幹であるため、言語の壁がそのままゲームの壁になる
  • オリジナルの素材やマウス操作を求める人——開発者が明言している通り、素材のほぼすべては既存のものであり、操作はキーボードを想定しマウスには対応していない

03系譜:この味の原点

97% が好評レビューはわずか 184 件英語にまだ非対応 — なのに、ほとんど誰も見つけていない

[DE:]Fanastasis 埋もれた名作

Steam自身の表記によれば、本作は「発見」を楽しむ、マップ探索メインの長編RPGだ。荒廃した王国には無数の隠し通路・隠し扉があり、隠された場所では宝箱が見つかることもある。手掛かりは必ず存在する——それは地形の見た目の違和感か、あるいは死者の記憶かもしれない。その記憶とは各地に漂う「残留思念」で、探索の手掛かりになる内容は自動でメモに記録され、別々の場所で得た情報が時折つながり合う。ボス以外の戦闘はすべて任意で、物語の目的である4つの「記憶のオーブ」はどの順番で集めてもよく、拠点へ一瞬で帰る方法は「死」だけだ。制作ツールはRPGツクールVX Aceで、ストア記載のプレイ時間は35〜85時間。開発者「もさもさ」(Steam表記 Mosamosa)は、無料版のVer1.00公開を伝える日本語ブログの記事で、2人での制作ではバグを取り切れない部分もあると書いている。同じブログによれば有償版は2023年10月にBOOTH、同年11月にDLsite、2024年4月29日にSteamで販売を開始した。無料版もある。日本のフリーゲーム配信サイト「ふりーむ」で今も配布されている通常版『Fanastasis』(2019年登録)を拡張した有償版が、Steamの本作だ。寄り道マップの追加と既存マップのリメイク(合計6エリア程度)、オマケボス12体、新アイテム約100個、便利機能を加えつつ、メインストーリーとエンディングは元の版と同じで、セーブも引き継げる。184件のレビュー(好評178件)で好評率97%の「非常に好評」。無料ではない有料タイトル(¥2,180)で、アーリーアクセスではなく正式リリース済み。ただし正直に一点開示する——高評価を支えているのは主に簡体字中国語のレビュー(184件中145件、うち好評144件)で、日本語のレビュー30件に限れば好評率83%(好評25件)になる。簡体字のレビュー145件のうち約20件は、有志の中国語化パッチに触れている。開発者は2026年5月、条件付きで非公式の有志翻訳と配布を認めた。英語の翻訳は見つからなかった。対応言語は日本語のみで、英語のレビューは5件。Steamの成人向けコンテンツの説明が挙げるのは、シナリオ内の暴力・流血表現と、薬物やアルコールの乱用・犯罪行為の描写(推奨する意図は無いと明記)で、性的な要素への言及は無い。素材のほぼすべてが既存のもので、素材単体のアート面のオリジナリティは無いこと、操作はキーボードを想定しマウスには非対応であることも、開発者自身がストアに明記している。媒体では、4Gamerはデータベースページのみで、記事は0件。Game*SparkはSteam版を週間の発売リストに作品名1行で載せた程度で、紹介記事は無い。ファミ通・電ファミニコゲーマー・AUTOMATON・IGNでは、Steam版を扱ったものが見つからなかった。もぐらゲームスは無料版を2回取り上げている(2020年12月の単独特集と、2021年1月の『2020年おすすめフリゲ・インディゲーム15選』の1本)。

あなたの手で、最初の合格を

Nepheshel(ネフェシエル) 原点

この味の原点——Nepheshel(ネフェシエル)。同人ゲームサークルStudio Tilが制作したRPGツクール2000製のRPGで、2002年6月にWindows向けのフリーウェアとして公開された。公式の紹介ページは同作を「ダンジョン探索型のRPG」とし、ダンジョンは地下で複雑につながっていて、どこをどう通ればどこに出るかは実際に歩いて確かめるしかない、一本道のシナリオは無い、行動を制約するデモは極力少なくした、と書く。敵はマップ上を歩いているので、とてつもなく強い相手のいるダンジョンでも走って突っ切れる。説明書の攻略アドバイスには、隠し部屋が非常に多いこと、その入り口は壁の隠し扉か床の隠し階段であること、中に強力な装備品が眠っていること、見つけられるかどうかで難易度が大きく変わることが書かれている。日本語版Wikipediaによれば、Nepheshelは同じRPGツクール製の『イストワール』(2003年)などに影響を与えた。イストワールはNepheshelの強い影響を受けた作品とされ、スタッフの一部が重なり、Studio Tilのサイトでは「姉妹作品」として紹介されていた。Studio Tilは今も公式ページで同作を配布しており、Vittone氏が翻訳した2022年の英語版(独自のバランス調整入り)へのリンクもある。Steam版は無く、原点はWikidataのエントリで同定する。[DE:]Fanastasisとは、ジャンルの呼び名でつながっている。もぐらゲームスはフリー版Fanastasisの特集で、これを「いわゆる『ネフェイスト(ネフェシエル・イストワール)』と呼ばれるジャンルのRPG」と書き、そのジャンルを、ダンジョン同士が複雑につながり、謎解きや隠し通路などのマップギミックが多数置かれたRPGと説明している。開発者も、よくある質問の記事でプレイヤーの要望を取り上げるときに、この呼び名を使っている。ただし、オマージュ元のゲームがフリーゲームだから一度は無料で公開したかった、とは書いているが、その作品名は挙げていない。だからこの系譜は、媒体とプレイヤーがFanastasisを置くジャンルに沿った当サイトの見立てで、開発者の意図を言い切るものではない。受け継がれているのは核の部分だ——自分の足で確かめるしかない場所で、壁や地形を疑った者ほど報われる。[DE:]Fanastasisはその核の上で、隠された道の手掛かりを地形の見た目の違和感と死者の記憶に置いている。はっきり違うのは制作ツールで、NepheshelはRPGツクール2000製、[DE:]FanastasisはRPGツクールVX Ace製だ。

あなたの手で、最初の合格を

04あなたの手で、この原石を輝かせる

気になったら Steam で確かめて、最初の合格をあげてほしい。あなたの一押しが、埋もれた原石を輝かせる。

Steam で見る

05この味の血統